租税特別措置(法人税関係)の適用状況等についての報告書
(要旨)
1 検査の背景
(1) 租税特別措置の概要及び租税特別措置を取り巻く状況
租税特別措置(以下「特別措置」という。)は、租税特別措置法に基づいて、特定 の個人や企業の税負担を軽減することなどにより、国による特定の政策目的を実現す るための特別な政策手段であるとされ、「公平・中立・簡素」という税制の基本原則 の例外措置として設けられている。特別措置全体の項目数は、平成26年4月1日現在で 385項目で、法人税関係の特別措置は116項目となっている。
26年6月に、政府税制調査会から報告された「法人税の改革について」においては、 法人税関係の特別措置の見直しが取り上げられている。
(2) 東日本大震災に対する税制上の対応措置の概要
特別措置とは別に、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関す る法律が制定され、税制上の対応措置(以下「震災特例」という。)が設けられてい る(以下、特別措置と震災特例を合わせて「特別措置等」という。)。震災特例全体 の項目数は26年4月1日現在で81項目、法人税関係の震災特例は21項目となっている。 (3) 関係省庁及び財務省における特別措置等の検証
行政機関が行う政策の評価に関する法律(以下「政策評価法」という。)等に基づ き、一定の法人税に係る特別措置の新設又は内容の拡充若しくは期限の延長に係る政 策を決定しようとする場合に、政策評価の実施が義務付けられた。
関係省庁は、政策評価法等に基づく検証のほか、各年度の税制改正要望の際に財務 省に提出する事前評価書等を添付した要望書において、減収見込額や政策目標の達成 状況を提示することなどにより、当該特別措置等の効果等の検証を行っている。
なお、震災特例については、政策評価法等において政策評価の実施が義務付けられ ておらず、震災特例の効果等の検証は、主にこの要望書において行われている。
そして、財務省は、関係省庁から提出を受けた要望書等に基づいて、特別措置等の 効果等の検証を行っている。
(4) 租特透明化法に基づく適用実態調査の概要
握する適用実態調査、②財務大臣による適用法人数、適用総額等を記載した「租税特 別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」(以下「適用実態報告書」という。) の作成と内閣による国会への提出、③政策評価を行うために必要がある場合の適用実 態調査の情報(以下「適用実態調査情報」といい、「適用実態報告書」と合わせて 「実態調査情報等」という。)の提供の要求と提供がなされることとなった。 2 検査の状況
会計検査院は、法人税関係の特別措置等の適用状況はどのようになっているか、関係 省庁及び財務省による検証は適切に行われているかなどに着眼して検査を実施した。 (1) 法人税関係の特別措置の適用状況の概況
法人税関係の特別措置116項目のうち、課税の強化となるものなど32項目を除いた調 査対象特別措置84項目について、25年度適用実態報告書を分析したところ、適用件数 は1,441,570件となっていた。また、財務省が適用実態報告書を基に試算した減収額は、 23年度9049億円、24年度1兆0003億円、25年度1兆4805億円と増加している。減収額の 主なものは「試験研究を行った場合の法人税額の特別控除」(以下「研究開発税制」 という。)が23年度3395億円(37.5%)、24年度3952億円(39.5%)、25年度6240億 円(42.1%)、「中小企業者等の法人税率の特例」が23年度942億円(10.4%)、24年 度999億円(9.9%)、25年度1084億円(7.3%)となっており、各年度ともこれらの 2項目で全体の約半分を占めていた。
(2) 研究開発税制
適用実態報告書によれば、23年度から25年度までの研究開発税制の適用実績は、適 用件数についてみると、製造業を中心に幅広い業種で適用されていた。また、適用額 についてみると、3か年度分の全業種の適用総額の合計は1兆2254億余円となっていて、 このうち「化学工業」が2965億余円(24.2%)と最も多額で、次いで「輸送用機械器 具製造業」が2651億余円(21.6%)となっていた。
%を、「輸送用機械器具製造業」850億円のうち「自動車・同付属品製造業」が819億 円で96.4%をそれぞれ占めていた。
23、24、25各年度の適用実態報告書により研究開発税制の適用による減収額の多額 な単体法人上位10法人、連結法人上位10法人、計20法人の状況をみたところ、これら の20法人で各年度の研究開発税制に係る減収額全体の38.6%(23年度)、41.9%(24 年度)及び50.2%(25年度)を占めていた。
(注) e-Taxデータ 国税電子申告・納税システム(e-Tax)により提出された 法人税確定申告書のうち、「計算証明規則」、「電子情報処理組織を 使用して処理する場合等における計算証明の特例に関する規則」等に 基づき会計検査院に証拠書類として提出されたもので税務署の規模に 応じて資本金や税額が一定額以上の法人税確定申告書のデータ (3) 法人税関係の震災特例
法人税関係の震災特例21項目のうち手続の特例等6項目を除いた15項目について、2 3、24、25各事業年度のe-Taxデータにより集計したところ、適用件数267件、適用総額 は、税額控除が7億余円、特別償却が53億余円などとなっていた。
(4) 特別措置の検証状況
ア 適用実態調査情報及び適用実態報告書の活用状況
25年度又は26年度に政策評価を行った調査対象特別措置のうち、実態調査情報等 を活用していたものは62件、活用されていなかったものは95件となっていた。活用 していなかった理由は、実態調査情報等には特別措置の条文を単位とした適用数や 適用総額が記載されており、政策評価の単位が実態調査情報等の単位より詳細な場 合には活用することができないなどであった。
イ 減収額と減収見込額とに開差がある調査対象特別措置の検証状況
24、25両年度の適用実態報告書から、税率の軽減に係る減収額及び税額控除に係 る減収額を会計検査院で試算し、これらの減収額と事前評価書等において各関係省 庁が試算した減収見込額とを比較すると、研究開発税制において、関係省庁におけ る24年度分の減収見込額2591億円に対して減収額は3494億円であり、開差額が903億 円となっていて、減収額が減収見込額を大きく上回る状況となっていた。このよう な減収額が減収見込額を大きく上回る状況に関する分析や検討の結果について、26 年度の事前評価書や27年度税制改正の際の要望書において説明されることなく、関 係省庁から拡充等の要望がなされていた。
対象特別措置の検証状況
26年度又は27年度の税制改正要望に際して検証を実施した調査対象特別措置のう ち、不特定多数の適用が想定されるもので、上位10法人の適用額の合計が適用総額 の80%を超えていて、かつ、適用法人数が20法人以上であるものを23、24両年度の 適用実態報告書から抽出し、これらの事前評価書や要望書における検証状況をみる と、適用数については特定の業種や企業に偏りがないなどの説明があるものもある 一方、適用額からみた偏りについては、いずれにおいても説明がなされていない。 エ 適用実態等からみて必要最小限の措置となっているかという点での検証状況
26、27両年度の税制改正の際に拡充等の要望を行った調査対象特別措置のうち、 税制改正要望の際に実態調査情報等の活用が可能であった17項目について、検証状 況をみると、関係省庁は、16項目について必要最小限の措置となっているかの検証 を行ったとしていた。しかし、必要最小限と判定した理由についてみると、拡充し ようとする措置の内容が適用実態等からみて拡充後もなお必要最小限であるとする 説明が必ずしも十分なされていないものが見受けられ、必要最小限の措置となって いるかということの検証が十分なされていないと思料される状況となっていた。 3 所見
特別措置等は、「公平・中立・簡素」という税制の基本原則の例外措置として設けら れているものであり、その効果等を不断に検証して、真に必要なものに限定すべきであ るとされている。
関係省庁においては、実態調査情報等を一層活用することなどにより、適用額からみ た業種や企業の偏りの状況や、特別措置の適用に伴う減収額が減収見込額を上回る状況 等について、検証内容を一層充実させ、拡充等の要望に当たっては適用実態等からみて 拡充後もなお措置の内容が必要最小限であるとする説明を十分行い、特別措置の実効性 を高めるとともに、国民に対する説明責任を的確に果たしていくことが望まれる。
また、財務省においては、特別措置等について今後とも十分に検証していくことが望 まれる。